独立行政法人 国立病院機構 村山医療センター

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トピック

新病棟に込めた想い


リハビリテーションセンター長  植村 修


病棟は生活の場として

 おおよそ人の活動を考える時、その人がいるべき場所というものが必ずあります。生徒であるなら学校がその場所であるでしょうし、働いている人なら職場がそうでしょう。そして何より、どういった人々であれ生活をする場所というものがあるはずです。

この世界には老若男女様々な方がいらっしゃいますが、医療機関がお付き合いするのは、当たり前ではありますが疾患を抱えた方々です。特に我々村山医療センターリハビリテーション科では、疾患の治療が落ち着き、しかし残念ながら心身の状態が生活をする場に戻るに十分ではない方々に対して、心身の改善のみならずその方々が暮らす環境などにも配慮したリハビリテーション治療を行なっております。診療に際しては常に良質であることを心がけてきましたが、私は赴任してからの期間、ずっと不満に思っていたことがありました。それは、患者さんが過ごさざるを得ない生活の場としての病棟が、そもそも生活の場として構築されていないことです。

リハビリテーションでの入院生活では、起床後まず寝間着から運動しやすい服装に着替え、朝の整容を行い、食事を摂り、リハビリテーションをし、などなど普段の生活を意識したサイクルを送ります。多くの患者さんが急性期治療の際にはそうできないため、これは再び適応するという意味を持つリハビリテーションの基本とも言えます。では実際に病棟を覗いてみるとどうでしょう?確かに患者さんたちはその人なりの活動度に応じて、歩く人、車椅子に座る人などなどいらっしゃいます。しかし、食事時にはほぼ全ての人が“ベッドに戻って”食事をしていました。実生活においてベッドで食事を召し上がる方はどれくらいいらっしゃるでしょうか?私は典型的な日本人なので、そんな人は映画の中でしか見たことがありません。衣食住は生活の基本ですが、揃っていればいいわけではなく、それらがしかるべき形で行なわれていることこそが大事だと私は思います。リハビリテーション病棟において食事をベッドで摂っている事実は、リハビリテーション医療の理念と必ずしも一致するとは言えないように思います。

明るい日差しに包まれたデイルームで食事を

 村山医療センターはこの春に念願の新棟へ移転しました。新しい回復期病棟ではとても広いデイルームを頂きました。そこでは患者さんが、経管栄養も含めて全員揃って食事を摂ります。

明るい日差しに包まれたデイルームで、皆がしかるべき場所へ戻る第一歩として、まずは食事の当たり前から始められるように。そんな想いを込めた新病棟で、皆で良質な医療を提供して参りたいと思います。

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