独立行政法人 国立病院機構 村山医療センター

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整形外科

脊椎・脊髄手術の先端 ~術中モニタリング~

先端医療

村山医療センター 
安田 明正


術後麻痺を減らすための戦い

背骨が湾曲してしまう側湾症の手術や脊髄に腫瘍ができた場合、難しい手術では手術後に麻痺が出現してしまうことがあります。術後の麻痺は軽快することもありますが、時としては残存してしまうこともあります。脊椎・脊髄の手術では全身麻酔で行うため、患者さんは深く眠ってもらいます。そのため手術中に神経の障害(まひ)が出ているか否かを確認することはできません。以前は術者の「勘」に頼らざるを得なかったため、脊椎・脊髄の手術の後は麻酔が覚めて手足が動くのを心配しながら見守る必要がありました。

術中モニタリング近年は、術中に患者さんの神経症状の変化を観察可能な装置が開発・改良されてきました。それがMEP(motor evoked potentials: 運動誘発電位)・SEP(somatosensory evoked potentials: 体性感覚誘発電位)といった術中モニタリングシステムです。


術中モニタリングシステム

麻酔がかかった後、頭に電極をつけて、手術中に電気刺激を行い反応を確認します。弱い電気刺激を送り、手足の筋肉の電流をモニター上で確認します。術中に神経にダメージが加わると波形が小さく変化したり出なくなります。その場合は手術を一時中断し、神経の回復を待つために少し休憩をします。手術部位をチェックして修正し、波形の回復がなければそれ以上神経に無理はできないので手術を終了にします。こうすることで脊髄手術の安全性が高まります。

術中モニタリング実際に、日本脊椎脊髄病学会では脊椎脊髄手術を行う際にアラームポイント(危険域)を設定して手術を進めたところ、術後の麻痺が減ったという報告も行われております。

もちろんすべての脊椎・脊髄手術にこのモニタリングシステムが必要なわけではありませんし、たとえモニタリングを行っていたとしてもさけられない麻痺が出現することはあります。脊髄モニタリングの有用性についての報告は多くされており、手術の安全性の向上につながっていますが、手術部位・術式・麻酔法によってはモニタリングの有用性が得られにくいこともあります。

より安全な手術を目指して

今後、麻酔方法の影響も受けず、正確に手術後の麻痺を確実に予測・予防できる手法の開発が待たれます。
当院においても数年前からこの手法を導入し、できうるだけ安全な手術を遂行できるよう努めてきております。またさらなる手法の開発のための研究も行っています。


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